『空っぽのやつでいっぱい』アボガド6著 読了。人生は幸福な空っぽなのかもしれない。
アボガド6氏のマンガ作品集『空っぽのやつでいっぱい』を読んだ。
きっかけはツイッターのTLに流れてきたツイートだった。多分、フォロー中の誰かがRTした物だ。
そのシンプルかつ命の表裏をスッパリと切り取った1枚の写真に一瞬で魅了された。
ツイートを辿り、何十枚も絵を見つめた。
そのどれもが生と死を鮮やかに彩り、そして的確に捉えていた。
凄い。
この人はじっと社会を見つめて、そこに溢れている見えない叫びを拾い続けているのだ。
気が触れる事無く。
そうして調べた結果、氏の初めての単行本である『空っぽのやつでいっぱい』を知って購入した。
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初めは少し不安もあった。
作品というのは媒体を問わず往々にして『伸ばすと希釈される』という傾向にある。
例えば大ヒットした曲を元にした映画が大ゴケしたり、小説化されるとメリハリが無くなったり。
1の物を2にするには1をもう1つくっつけなくてはならない。
1+1=2
で、この余分に足された1が作品を台無しにしてしまう場合が少なくないのである。
1枚の絵でここまで忠実に現実を切り取れる作家さんが描いた漫画。僕はそこに”余分な1”があるのではと心配したのだ。
結論から言うと、そんな物は杞憂だった。
ページ数が増え、ストーリーが増し、結果的にそこには膨大な情報量が伴っていた。
希釈なんてとんでもない。むしろ濃縮度が増されているように感じた。
不安を持ちつつ本を買った過去の自分を六法全書の角でぶん殴ってやりたい。
さて、この漫画に関しては特にネタバレをしたくない部類の内容だったので、迂闊に物を言えない訳だが。
兎に角買って損は無い。何なら得をする。徳も積める。(当社比)
命。人生。生きる事、死ぬ事。
その全ての解釈や価値観が、この1冊に詰まっていた。
読後感は極端に分かれると思う。僕はとても穏やかで晴れやかな気持ちになった。
「そうだ、これでいいんだ。」
そう思いながら背表紙を閉じた。