今思えば特殊で恵まれた環境だった『サブカル』と『オタク』の実家。
僕はサブカル好きのオタクだ。
同じ趣味趣向の仲間もいる。
でも、最近になって初めて、自分の家庭環境は恵まれていたのだと知った。
オタクなので二次元の女の子のカレンダーやタペストリーを飾った。
アニメを家族共有のレコーダーで録画し、秋葉原で中古のLDを買い漁ったりもした。
大好きなホラー映画も沢山観た。
月間ムーが大好きだった。
心霊やオカルトが大好きで、都市伝説も収集している。
また一方でV系と呼ばれる音楽が好きで、ゲーム好きの延長で8bit系も好きだ。
そして機械が大好きで分解や組み立てもする。
それら全てを家族は知っていたし、何も言わなかった。
より正確に書くなら家族は大先輩であった。
ネットでコミケの存在を知り行ってみたいと言えば、母親が連れて行ってくれた。何故なら母親は元サークルの人だった。
ホラーやスプラッタといった映画も母親の好物であった。今思えば小さい頃よくテレビで『IT』や『チャイルドプレイ』が流れていたが、多分あれは母親がビデオを再生していたのだ。
初めて好きになったバンドのライブに行った時もそうだった。母親が全部手配して連れて行ってくれたが、それは母親がバンギャだったので慣れていたのである。
ゲームに関しては母の弟、つまり叔父が精通していた。
当時3才だった僕にゲームボーイをくれたのも、どのゲーム機を買うか悩んでいた時にプレステを勧めてくれたのも叔父である。
またLDをくれたのも叔父であり、ゲームやLDを買うなら此処だと秋葉原に連れて行ってくれたのも叔父だ。
高校の入学祝に何が欲しいか訊かれた時に自作PCをやりたいと答えた時、パーツ屋を紹介してくれたのも叔父だった。
そう。叔父は機械オタクでもあった。
何なら大学で無線クラブに所属していたり、趣味のプラモデルでエアブラシを使用したりしていたので、がっつりオタクだった。
そしてこの姉弟の共通の趣味こそ、月間ムーだったのである。
世間一般のオタクは、カレンダーやタペストリーなど絶対親に知られてはいけないし、そういう本は購入の際絶対にカバーを着けてもらうらしい。
アニメはバレないように隠れて観ているし、ゲームも親の目を盗んでコソコソとやるのが普通なんだそうだ。
そういうジャンルの物は親の視点では『害悪』なのだと言う。
僕は家族によって軟禁状態にあったので他の家庭という物を知らない。それ故にサブカルやオタクが迫害対象だった事も知らなかったのである。家族がサブカルやオタクに精通していれば当たり前の事だが、青春時代何の後ろめたさもなくむしろ自信を持ってそういった世界に入り浸る事が出来たのは、とても恵まれた環境だからこそだったのだと初めて知った。
ちなみに現在母親と2人暮らしだが、玄関にショーケースを置いている。
そこには二次元の萌えな女の子から『ヘルレイザー』(グロくてスプラッタなホラー映画)まで様々なジャンルのフィギュアを飾っている。
色んな意味で悪趣味だと今は自覚しているが、自分を偽ることなく過ごせるのは貴重な時間と場所だと思う。
肩身の狭い思いをしているオタク達が少しでも自信を持って実家で暮らせたら良いのになあ。